—— バージョン3の印象は
新しい機能はバージョン1から2になった時の方が多かったと思うのですが、皆がFacebookコミュニティとかで言っていたバグが、ことごとく修正されているのが嬉しいですね。Studio Oneというと、シンプルで音が良いDAWというイメージがあると思うのですが、僕はすごくユーザー寄りのDAWだなと感じています。バグの修正が早いのもそうですが、ユーザーが要望した機能が次のバージョンで早速実装されるなど。皆の声が届くDAWというか、個人的にはそれが一番気に入っていますね。
—— バージョン3で特に気に入っているのは
新しいソフトウェア・インストゥルメントのPresence XTですね。僕はモバイル用のMacBook AirにもStudio Oneを入れていて、旅先で曲をスケッチする時に使ったりしますが、バージョン2までは音源が弱かったので、やっぱり作業場でやらないとダメだなと思うことが少なくなかった。しかしPresence XTはすごく良いので、旅先でもかなり作り込めるようになりました。後の細かい作業をアシスタントにお願いする場合も、Presence XTだったらファイルを投げるだけでOKですしね。Mai Taiもバージョン3になった時にシーケンスとかで何曲か使いましたよ。
—— 作家向けのスクラッチパッド機能は
すごく便利な機能ですよね。昔からプロジェクトの後ろの方を使って別バージョンを作るとことをよくやっていたので..。作業途中で要らない部分だと勘違いして、間違えて消してしまうことがよくありまして(笑)。その点、スクラッチパットは別軸に存在するものなのでそういう心配も要らないですし、すごく作家寄りというかクリエイターの気持ちを理解した機能だと思います。あとはアレンジトラックも便利ですね。AをBの後ろに持っていくなど試行錯誤ができるので。サウンドトラックの仕事とかでは助かりますね。
数々の名作を生み出してきた林ゆうき氏の作業デスク
後はマルチトラック・コンピング。テイクを何回か録り、良い部分を簡単に組み合わせることができる。Studio Oneのコンピング機能はシンプルで使いやすい。それとクリエイター目線で設計されているユーザー・インターフェースも気に入っています。例えばエフェクトを使いたい場合、右側のブラウザーからプラグインをトラックへドラッグ&ドロップするだけで使えるのが良いですよね。さらに、プラグインのインサーションなどの情報込みでトラックを簡単にコピーできるのも良い。他のDAWではできないですからね。
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—— 劇伴制作ならではのStudio Oneテクニックがあれば
劇伴では最初に、明るい曲とか悲しい曲といった抽象的なオーダーを貰い、それに合わせて何十曲も作る必要があります。その際、1曲ずつ別のプロジェクトで作るのではなく、最初は1つのプロジェクトの中で全部作った方がいいかもしれないですね。その方が全体のバランスや統一感の確認ができますし、朝の連続テレビ小説とかですと100曲以上作らなければならないので、同じような曲がないかチェックすることもできる。それである程度できた段階で、各曲を小分けにする。これは、動作が軽いStudio Oneならではのフローだと思います。
音楽制作の合間に愛犬とリラックスする林ゆうき氏
—— Studio Oneは劇伴作曲ツールとしても十分な機能を備えていますか
もちろん十分です。機能的には十分過ぎると思います。先ほども紹介しましたが、最初に1本のトラックの中でアレンジした後、楽器ごとに別のトラックに振り分けるという劇伴的な作業にも対応していますし、スクラッチパッドやアレンジトラックも支援してくれています。バージョン・アップでユーザーの要望をしっかり反映してくれますし、凄く満足しています。あとは動画の書き出しができるようになると嬉しいですね。現状は映像編集ソフトウェアを併用しなければならないので、簡単な映像付き書き出しがStudio Oneだけでできるとよりいいと思います。
林ゆうき 高校生の時に男子新体操に出会い、踊るための音楽を選曲しているうち に伴奏音楽の世界に傾倒していく。演技者として大学に進学…音楽経験はなかったが、独自の音楽性を求め 大学在学中に独学で作曲活動を始める。卒業後にhideo kobayashiにトラックメイキングの基礎を学び、 本格的に伴奏音楽制作者に。2008年末、ドラマ「トライアングル」の音楽制作に関わる。
林ゆうき公式サイト
Photo/Video:八島、鈴木
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