Erisはフォルムが美しい、そしてフラットでキッチリ鳴ってくれる
UNIVERSOUL999 STUDIO|与田春生 & 川口昌浩
モニターは違いがわかることが重要
与田:僕は1992年にBMG JAPANに入社して、最初は制作のアシスタントだったのですが、間もなくディレクターとなり、多くのアーティストの作品に関わりました。島野聡のLove Lights Fields、佐々木潤のPEACE FORCEなどなど..。中でも一番大きかったのは、MISIAですね。彼女の歌声は、最初からもう圧倒的でした。それで当時、人気があった宇田川町界隈のDJ達と絡めて、リミックスを収録したアナログ盤を切って。そうしたらJ-WAVEでヘビーローテーションされて、一気にブレイクしました。
そしてもっと自由にいろいろなアーティストをプロデュースしたいなと思い、BMG JAPANを辞めて1999年に開設したのがこのUNIVERSOULなんです。これまでMISIA、加藤ミリヤ、AI、露崎春女など、主に女性アーティストをこのUNIVERSOUL999 STUDIOで手掛けてきました。最近力を入れているのが東京女子流で、今も連日彼女達のプロダクションを行っています。また、若いアーティストをどんどん育成したいと思い、空いた時間にボーカル・スクール「UNIVERSOUL Vocal Workshop」も運営していたりします。
UNIVERSOUL999 STUDIOでは、いろいろなモニター・スピーカーを使ってきたのですが、重要なのは違いがわかることなんですよ。出音が良いか悪いかというのは相対的なものだと思っているので、スタジオが一番良い音、ベストな音である必要はないと思っています。あくまでもモニターなので、違いがわかることが重要なのです。かつて標準だったNS-10Mも決して良い音ではないですし、上も下も無く中域だけが妙に出る(笑)。2000年に冨田恵一氏とMISIAのEverythingのミックスでナッシュビルのジョージ・マッセンバーグのスタジオに行った時にNS-10Mを用意して欲しいと頼んだら、あんな音で作業したいのかと呆れられましたからね(笑)。だからモニター・スピーカーに関しては、自分で違いがわかれば良いと思っています。ただ、他のスタジオに行って違和感を覚えるものでは困る。それと毎日使う機材ですから、できるだけ耳に馴染むものが良いなと思っています。
本当にフラットなのでEQでポイントを探るのがとてもラク
川口:僕は、このUNIVERSOUL999 STUDIOの開設当初から仕事をさせてもらっています。与田さんがスタジオを作るということになった時に、モニター・スピーカーに関しては一緒にいろいろ試したんですよ。DYNAUDIOやGENELECとか、一通り皆で聴き比べて。それで最終的に導入したのがフォステクスのNF-1Aでした。僕はNeveやSSLが入っているスタジオで仕事をする時にはNS-10Mを使うのですが、やはり何でも良く聴こえてしまうモニター・スピーカーというのは使いづらいですね。その点、NF-1Aは丁度良いバランスでした。
与田:NF-1Aに特に不満があったわけではないですけど、そろそろ新しい機材にしたいなと思っていたんです。それでいろいろチェックしている中で、PreSonusのEris Eシリーズを見つけたんですよ。先ずフォルムが美しいなと思って。ブルーLEDもカッコ良かったですし、ツルっとしたシンプルなデザインが気に入りました。それで、最新のモニター・スピーカーをいくつか並べて実際に比較試聴させてもらったら、Eris E8が音もコストパフォーマンス的にも良かったので直ぐに導入しました。ここにはモニター・スピーカーとしてMark LevinsonとPMCのシステムもあるのですが、普段の作業では完全にErisがメインですよ。
Erisの音の印象は、とにかくフラット。クセが無い感じがします。僕は2ミックスにEQをインサートして、嫌なピークを探して取るという作業をやるのですが、それはフラットなモニター・スピーカーじゃないとできないんですよね。クセのあるスピーカーだと、嫌なポイントを探すのが難しいんです。その点、Erisは本当にフラットなので、EQでポイントを探るのがとてもラクですね。ただ、レベルを入れるとErisの筐体が若干反響するので、上にウェイトを4個載せて使っています。やっぱりスピーカーというのは重い方が良くて、これだけで全然違う音になりますね。Erisを使っている方にはオススメのチューニング方法です(笑)。
Erisはスタジオでしっかり鳴ってくれた
川口:PreSonusのErisは、良い意味で特徴が無いので、とても作業がやりやすいスピーカーです。正直、NS-10Mよりも格段に良い。そして、UNIVERSOUL999 STUDIOではNS-10Mはまったく鳴らなかったのですが、Erisはしっかり鳴ってくれましたからね。とても良く出来たモニター・スピーカーという印象です。
与田:総じてErisには非常に満足していますよ。特に、松井寛(註:東京女子流の楽曲を手掛けるコンポーザー/アレンジャー)氏の曲は、キックとかローの出方が尋常ではないので(笑)、普通のモニター・スピーカーだと低域がよくわからなくなってしまうんですが、Erisはキッチリ鳴ってくれる。凄く良い感じで作業できています。
Erisが気に入ったので、同じPreSonusのMonitor Station V2も導入したんですよ。Monitor Station V2は、以前に使っていたモニター・コントローラーと比べて、ちゃらちゃらした感じがしないというか、非常にスッキリした音です。今までどうしても中音域が気になっていたのですが、それがモニター・コントローラーの影響だったのだとMonitor Station V2を導入して気がつきましたよ(笑)。
以前は大型のコンソールも入れていたのですが、スタジオをスッキリさせたくて外しました。ただ、ボーカル・トラックのオートメーションはとても重要なので、PreSonusのFaderPortもずっと気になっていたんですよね。実際に導入してみると、フェーダー1本とトランスポートがあるだけで、本当に作業がやりやすくなりました。設置スペースも必要なく、Pro Toolsとの相性も良いですし、PreSonusのハードウェアは良いポイントをついていますね。
取材協力:UNIVERSOUL999 STUDIO
PHOTO:エムアイセブンジャパン|マーケティング
与田春生
音楽プロデューサー & UNIVERSOUL代表
作詞家、橋本淳を父に持ち、幼少より歌謡曲、ソウル、ロック、クラシックなど様々な音楽に触れ育つ。当時より自宅に出入りする作家、ディレクターに影響されクリエイティブな音楽の仕事を志す。詞曲のコンビにあった筒美京平氏に憧れるも、作家業の過酷さに不安を抱きレコード会社に就職。ライジングプロダクション平哲夫氏のもとで仕事を学び、1997年九州のオーディションで当時18歳の女の子をスカウト。MISIAと命名し、センセーショナルなヒットを生む。以後、10年間、MISIAを中心に、AI、加藤ミリヤ、リリコ、華原朋美などの女性シンガーを中心にプロデュース活動を展開している。これまでに制作したCDの売上げは、3,000万枚に及ぶ。
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川口昌浩
レコーディング&ミックス・エンジニア
MISIAのCD、DVD全作品を手掛けるエンジニア。打ち込み、ダンスミュージックをはじめ、生楽器、オーケストラ、ライブ・ステージまで幅広いジャンルのレコーディング・ミキシングに定評を得る。また、MISIAのライヴDVD「THE TOUR OF MISIA 2002 WOWOW EDITION」は社団法人BS デジタル放送推進協会が選出する5.1サラウンド賞を受賞。
UNIVERSOUL 999 STUDIO
渋谷駅から徒歩5分、公園通りから車で1分と、絶好のロケーションに位置。白を基調としたインテリアと外光が差し込む明るい空間はまるでリビング感覚。開放感溢れるリラックスした雰囲気でのレコーディングが好評を得ている。コントロール・ルーム、ヴォーカル・ブースを備え、Vo、ソロ楽器のレコーディングをメインに、プリプロ〜REC〜EDIT〜T/Dまで一連の作業にフル対応。更にマスタリング機材も備え、プロダクションのトータルサポートを行う。
[UNIVERSOUL999 STUDIO公式サイト]