The Professionals Reviews
UVERworld
サックス/マニピュレーター誠果
2020年に結成20周年&デビュー15周年を迎えたロック・バンド、UVERworld。EDMやビート・ミュージックといった時代時代のサウンドを積極的に取り入れ、独自のスタイルに昇華させて生み出される楽曲は、世代の垣根を越えて高く評価されています。彼らの真骨頂と言えるのが、デビュー以来毎年欠かさず行われているライブ・ツアー。アニバーサリー・イヤーも5日間・3会場・10公演にわたるアリーナー・ツアーを実施。会場にはライブに飢えていた多くのファンが足を運び、大盛況のうちに幕を閉じました。
そんなUVERworldのリハーサルで活躍するのが、StudioLive 32SCを核に据えたPreSonusのAVBエコシステム。StudioLive 32SCを同期システム用オーディオ・インターフェース/ハウスPAミキサー/モニターPAミキサーとして使用することで、極めてシンプルなモニター環境を構築。ボーカル/ドラム用のパーソナル・ミキサーにはEarMix 16Mが活用され、メンバー自身の手でモニター・バランスを調整できるシステムが組まれています。様々な選択肢の中から、PreSonusのStudioLive AVBエコシステムを選定した理由とその使用感、さらにはUVERworldの同期システムの詳細について、サックス/マニピュレーターの誠果氏にインタビュー。
UVERworldのライブ・サウンドを支える同期システム
初期の頃はMTRを使っていたこともあるんですが、だいぶ前にDAWに移行しました。ステレオが3系統、モノが3チャンネルで、内訳としてはステレオ・シンセ、ステレオ・ループ、ステレオ・コーラス、モノのボーカル・ダブル、メインのクリック、サブのクリック。これらの音をミキサーでミックスし、PAさんに送っています。
メンバー全員DAWを使うんですけど、ライブで再生する素材に関しては、レコーディング時のプロジェクトを元に、僕が音を抜いたり足したりして作っています。レコーディング時のデータをそのまま使うことはまずなく、特にローの楽器に関しては差し替えることが多いですね。実際にライブ会場で鳴らしてみて、お腹にドスンとくる、頬がピリピリする音を作るというか。もちろん、曲によってはローが出過ぎという場合もあるので、そういう時は良い感じに補正します。ローに関しては、ライブ会場で再生してみないと本当に分からないですね。
システム的には、MacにDAW&オーディオ・インターフェースと、至って普通なのですが、バックアップ・マシンを2台用意しているのは珍しいかもしれません。僕らくらいの規模のツアーになると、バックアップ・マシンが1台では少々心許ない。なので、メイン、サブ1、サブ2と3台のマシンを走らせて、サブ2は少し簡易的な構成ではあるんですが、メインとサブ1はまったく同じ音が出るようにしてあります。
複数のパソコンを同期させる方法は、いろいろなやり方があるんですが、僕の場合はシンクロナイザーを使用し、SMPTEで同期させています。同期と言っても、曲ごとに頭だけを引っかけているというのがポイントですね。メイン・マシンをマスターにして完全にシンクさせてしまうと、メインがこけた時にバックアップの方も止まってしまいますから。シンクロナイザーには1回だけ引っかけるという設定があり、曲の頭だけ引っかければ後はまったくズレません。いろいろ試した中では、今のところこの方法がベストかなと思っています。プラス、アーカイブ用のマシンも用意してあります。突然セット・リストにはない曲をやることもあるんですよ(笑)。なのでアーカイブ用のマシンを用意して、さすがに5枚目のシングルのカップリング曲とかは入れていないんですが、この数年の間にライブで演奏した30曲くらいはいつでも再生できるようにしてある。あとはメンバーが演奏できるかどうかですね(笑)。
リハーサルの中核機材として選定されたStudioLive AVBエコシステム
僕らは、普通のバンドがツアー前に湾岸のスタジオで行うような大規模なリハーサルをほとんどやらないんですよ。どうしてもリハーサルが必要な時は、街スタを予約して、メンバーだけでやってしまうんです。なぜかと言うと、みんな制作のスケジュールが詰まっていて忙しいですし、メンバーだけでやった方がやりやすいじゃないですか。それとUVERworldって、セット・リストがライブ当日まで決まらないことがほとんどで、前日でも7割くらいしか決まってなかったりするんですよ。セット・リストが決まっていない状態で大きなスタジオでリハーサルしても、あまり意味がないですから。
街スタでリハーサルをする時は、小型のコンソールを持ち込んで、僕がモニター・ミックスとハウスの音を作るんです。なのでリハーサルでは、僕が一人でモニターPAとハウスPAとマニピュレーターをやる感じなんですけど(笑)、オペレーションよりも大変なのがセッティングなんですよ。これまで使っていたコンソールはアナログだったこともあり、とにかくケーブルの接続が大変で……。ボーカルとドラム用のモニターもセッティングしなければいけませんからね。。
それでもうちょっとシンプルにできないものかと、お世話になっているショップの店員さんに相談したところ、PreSonusのStudioLiveがいいとおしえてもらったんです。「StudioLiveなら、同期マシン用のオーディオ・インターフェースとしても機能して、なおかつAVBでボーカルとドラム用のモニターも出力できる」と。その話を聞いて、これは良さそうだとすぐに導入を決めました。
導入したシステムは、StudioLiveが32チャンネル入力のStudioLive 32SCで、ボーカルとドラムのモニター用にEarMix 16Mを2台、そしてAVBスイッチのSW5Eという構成です。
同期用のMacは、StudioLive 32SCにUSBで接続するわけですが、それによってセッティングがめちゃくちゃシンプルになりました。USB経由で送る音は、本番の時と同じステレオ3系統とモノ3チャンネルで、StudioLive 32SCのアナログ入力には、ボーカル、ドラムのキック、アップライト・ベース、自分のコーラス、サックスの各マイクを接続しています。そしてStudioLive 32SCのアナログ出力をスタジオ常設のスピーカーに繋ぎ、リハーサルを行うという感じですね。
セッティングがシンプルになり、音質も大幅に向上
とにかくセッティングがラクですね。パソコンとの接続は、これまでオーディオ・インターフェースとミキサー間で何本も繋いでいたケーブルが不要になり、USBケーブル1本で済んでしまうわけですから。パソコン側の設定も、もちろんドライバーをインストールする必要はあるんですが、めちゃくちゃ簡単。AVBのようなデジタル伝送規格を使うのはこれが初めてなんですけど、実際に使ってみると細いケーブル1本でセッティングが完了してしまうので本当に便利です。ケーブルが少なくて済むというのは、セッティングがラクというのもありますが、無用なトラブルの回避にも繋がりますよね。
使ってみて感じたのは、凄く音が良いなということ。とてもクリアな音で、ローエンドもハイエンドもしっかり伸びていて。ケーブルの本数が減って、ギリギリまでデジタルで送受信しているというのも大きいんでしょうね。操作性も直感的で気に入っています。特に気に入っている機能は『FlexMix』ですね。AUXやグループ、マトリクスを内部で自由に組んで、背面のアナログ出力から出せるという機能で、これがかなり便利。例えば、スタジオでドラムのキックだけをマイクで拾って、StudioLive 32SCの中でEQをかけてから転がしのモニターから出したりしているんですけど、そんなルーティングも『FlexMix』を使えば簡単にできる。
EarMix 16Mの操作は二人(注:ボーカルのTAKUYA∞氏とドラムの真太郎氏)に任せていて、今はだいぶ慣れてきたようで普通に操作してますね。
あれだけコンパクトなのに16chミックスできるというのは凄い。これまではモノで送ってアナログ・ミキサーで操作していたわけですから、特にボーカルなんかは劇的に変わったのではないかと思います。二人が作った設定が勝手に保存されるというのもいいですね。
StudioLiveは柔軟性が抜群に高く、ニューエイジなコンソール
総じてStudioLive 32SCに関しては、かなり満足しています。街スタでリハーサルをすると言いましたけど、ツアー中に地方の街スタに入ることもあるんですよ。でも地方の小さな街スタですと、ミキサーが古かったり、ケーブルが少なかったり、東京の街スタのようにできないこともあったりする。でもStudioLive 32SCがあれば、どんなスタジオでもいつものようにリハーサルができるので、とても心強いですね。
StudioLive 32SCを導入するまでは、PreSonusってStudio Oneのメーカーというイメージが強かったのですが、こんな機材を作ってしまう高い技術力があるということに驚きました。国産メーカーのコンソールと比べると、柔軟性が抜群に高いというか、ニューエイジなコンソールという感じがします。国産メーカーのコンソールがWindowsだとしたら、StudioLive 32SCはMacというか。これでは上手く伝わらないかもしれませんけど(笑)。
今後はもっと使い方を覚えて、レコーディング機能なんかも使ってみたいと思っています。SDカードに録音できるようなので、ちょこっとレコーディングしたいという時は、DAWを接続するよりもラクなのではないかなと思っています。
取材協力:宮地楽器 神田店
PHOTO:鈴木
UVERworld
滋賀県出身の6人組バンド。2000年に結成し、2005年D-tecnoLifeでデビュー以来、36枚のシングル、10枚のアルバムをリリースしそのほとんどがオリコントップ5にランクインしている。2010年には結成10周年、メジャーデビュー5周年を迎え東京ドームライブを敢行し42,000人を集客し大成功を収めた。さらに、2014年には京セラドーム大阪でのワンマンライブを敢行、約40,000人を即日完売。2019年に発売した10枚目のアルバム「UNSER」はオリコンウィークリーランキング1位を獲得、同年12月には9年ぶりとなる東京ドームを開催、そのうちの1日、12月20日には東京ドームでの男祭り「6 VS 45000人」を完売させ日本記録を樹立。2020年には結成20周年、デビュー15周年を迎えた
[UVERworld公式サイト]
誠果
UVERworldのサックス&マニピュレーター。ハイブリットなUVERworldのバンドサウンドを支える誠果は、もはや“UVERworldの心臓”といっても過言ではない。ライブでは司令塔の役割を担う。
[誠果公式サイト]
NAMELY
2021.06.02 Release!!UVERworld 38枚目のシングルは超人気TVアニメ「七つの大罪 憤怒の審判」 EDテーマ
-収録内容-
1.NAMELY
2.LIVIN’ IT UP
3.NAMELY (instrumental)
通常盤
SRCL-11812 ¥1,227-(+tax)
[NAMELYリリース情報]
関連情報
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King Gnuを率いる常田大希氏のmillennium parade。そのメイン・システムに選ばれたのがPreSonus製品です。総指揮を担う常田氏にインタビュー