今回は、譜面やDAWにおける記述方法とは異なる道具としてアルゴリズム作曲法を扱う。本パッチでは、まずlogicalフォルダをMaxのLibraryフォルダー内に移動する。それによりMax内で[and]や[or]などの論理演算子や、n進数を扱う[ternary]を使うことが可能だ。今回事例として紹介するのは三輪眞弘の「またりさま」のアルゴリズムである。これはXOR(排他的論理和)回路を円環状につなげて作られている。この作品の本質は、アルゴリズムで作られた楽曲を人間に演奏させるというところだが、そこは今回は置いておく。このパッチは「またりさま」のアルゴリズムを拡張する形で制作した。
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このパッチは、筆者が所属しているエレクトロニカ・ユニットmacaroomで、ライブ演奏を行うために作りました。macaroomのライブ演奏は、ボーカルとキーボード、Maxによるエレクトロニクスの編成で行っています。曲の途中まではボーカルとキーボードだけで演奏していて、途中からMaxによる自動生成リズムが入ってくるような構成の曲の場合、毎回揺らぎながら異なるテンポで演奏されているので、その時々のテンポにMaxの演奏を合わせる必要があります。また、リタルダンドしながら曲が終了したりする場合には、Maxのテンポは非常に細かい粒度で生演奏に追従しなければいけません。そのような場合にこのシステムを利用して演奏しています。macaroomでは1曲ごとに専用のパッチを作っているのがほとんどですが、まだパッチを作っていない曲をいきなり演奏してみようというときにも、このシステムで即興的にリズムを加えたりもします。
今回は、羽田空港第2ターミナルに展示中(2021年11月現在)のサウンド・インスタレーション、スズキユウリ×細井美裕による『Crowd Cloud』のテスト・パッチを紹介します。この作品は、日本語を構成する音を細井さんが発声/録音し、それを68個のホーンからランダムに出力することで、独自のサウンドスケープを作り出します。さまざまな高さと方向を持ったホーンのビジュアルはスズキユウリさんの設計です。細井さんはサウンド周りを担当し、時間によって出力する音声の傾向を調整して、多彩な音景を作り出そうとしていました。今回紹介するテスト・パッチは、作家から正式に制作を求められたものではありませんでした。ただ、このパッチがあることで表現内容の検討ができるかもしれないと、勝手に制作し、細井さんに託してみたというのが制作の経緯となります。
今回紹介するのは、音声ファイルを[buffer~]に読み込み、32パートへ均等に分割して、ランダムなタイミングで再生するパッチです。[buffer~]に取り込んだファイルに対して、すべて同じ長さになるように32のループ・スタート/エンドのポイントを決めます。4分のファイルの場合、7.5秒のループが 32個作られることになるわけです。どのループをどのタイミングで再生するのかは、音声ファイルを[buffer~]に読み込み終えた際にランダムで決められ、[matrixctrl]にセットされます。さらに、1シーケンス終えるたびに1カ所だけランダムで変更され、常に再生されるパートがわずかに変化します。言葉で説明してもなかなかややこしいと思いますので、ぜひパッチをダウンロードして実際に使ってみてください。
今回紹介するのは大学時代に初めて作ったMaxパッチの2021年バージョンです。2つのサイン波の周波数や周期を微妙に変化させることで干渉やうなりを起こすテクニックを元に、LFOをスパイス的に用いながらカット&ペーストでたくさん並べることでアンビエント・ドローンを生み出します。1つの大きな流れを虫眼鏡でクローズ・アップしてみると、小さな動きのうごめきがあちこちで起きているよ、というようなイメージでしょうか。“簡単なテクニックでもオリジナルなサウンドや作品につながっていく”という良い例だと思い、取り上げました。当時はプログラミングも音響合成についても全く知識が無く、アナログ・シンセやモジュラー・シンセの存在すら知らなかったので、とにかく理解したことを使いこなして面白いものを作ろうと耳をすませながら手を動かした結果です。この原体験やアイディアが作品制作の根底に深く結びついていきました。
筆者は“楽器経験者や未経験者の区別無く、音楽という枠組みの中で、さまざまな表現や工夫をやり取りができる”電子楽器やシステムの開発を目指しており、このコンセプトを実現するために2点(①電子楽器同士の通信により音楽理論および演奏技術的な側面をサポートする。②演奏者がさまざまな工夫ができるよう“余白”を作る。)を重視しています。①を実現するために、まずは“途中から誰かが参加してきてもビートが同期しているので破たんしない”という仕組みを設計し、さらにその音楽表現がどういったものになるかを確認するためにも、簡単なプロトタイプを開発してテストしなければなりません。今回は電子楽器開発時にプロトタイプとして作成したパッチを再構成した、“モジュールの増減でバリエーションを生み出すステップ・シーケンサー”を紹介します。
コンパクトなボディにもかかわらず良い出音で、鍵盤のウェイトも絶妙なYAMAHA Reface CS。スピーカー内蔵かつ電池駆動も可能という素晴らしいスペックを持ちながらも、本体にプリセット保存機能が搭載されていないため、ライブや制作時でのプリセット・リコールが一筋縄ではいかないという、かわいいながらもなかなか手のかかるシンセです。このシンセを使い倒すべく、Maxを用いてパラメーターを保存/呼び出しができるライブラリアンを作成しようと、このパッチ=Reface ParameterCaptureを制作しました。
私自身の最近の活動はサウンド・アート的な文脈でのパフォーマンスやインスタレーションが多いのですが、今回は音楽寄りのパッチを紹介したいと思います。“それぞれの音が、それぞれ固有の周期性で発音する”というコンセプトを実現するためのパッチで、ブライアン・イーノのような音作りから、ポリリズムによるパーカッシブなダンス作品のための音作りにまで応用しています。ある舞台作品のサウンド・デザインを以前に手掛けました。その作品の原作『さようなら、ギャングたち』(高橋源一郎著/講談社)にこんなシーンがあります。“「幼児用墓地」は役所の裏にある。有名な建築家が有名な建築スタイルで設計し、内装は有名な画家が有名な「子供たちの七つの天国」の図案を基に担当し、有名な作曲家の悲歌(エレジー)がエンドレステープで流れているのだ”。この“エンドレステープ”をどう表現しようかと考えていたときに思い出したのが、ブライアン・イーノが『Music For Airports』で用いた作曲技法です。
今回紹介するのは、リアルタイムに信号を生成する照明制御パッチです。ライブ・ハウスやクラブで行われるライブ・イベントなどで使用することを想定して作成しました。現在、音楽ライブの現場で使われている照明制御卓は、30年ほど前とあまり変わらない仕様のままです。昨今の技術力向上により処理速度やシミュレーションの精度は向上したものの、制御方法自体の変化はほとんど無く、事前に仕込んだプログラムを本番中に呼び出す方法を採用しています。今回制作した照明制御パッチは、リアルタイムに照明制御の信号を生成&編集することが可能なシステムです。現場での調整や本番中のアドリブなど、舞台現場においてリアルタイムに信号生成&編集をするメリットは多く、コンピューターの性能は今後もさらに良くなることが予想されるので、リアルタイム処理技術はより効果を発揮することが期待できます。このシステムは、従来の照明制御卓と共存することができるのも大きな特徴の一つです。
Maxは、まだMax/MSPと呼ばれていた時代から使っています。古くからのMaxユーザーですが、かなりブランクもあったため、IAMASで研究を行うにあたって再入門しました。研究の内容自体を説明すると長くなってしまうのでここでは割愛しますが、その過程で制作したものがPolymachineというパッチ。今回は複雑なポリリズムを生み出すこのパッチを紹介します。Polymachineは、サンプルをトリガーする8trステップ・シーケンサーです。2trが一組となっており、各組で一定の周期を任意の数で分割して、選択した拍でサンプルを再生できます。つまり計8trでポリリズムを作ることが可能です。起動時には上から5拍/7拍/4拍/12拍という分割になっていますが、各組の左側にある“Beats”から変更ができます。また、Masterの右側にあるPresetをクリックすると再生パターンの切り替えが可能です。各シーケンサーの右側にはデフォルトのサンプルを読み込む[buffer~]とサンプルを変更するための[read]メッセージが置いてありますので、好きなサンプルで試してください。[buffer~]にサンプルをドラッグするだけでサンプルの変更もできます。
私はもともとDAWを中心とした音楽制作をしてきましたが、いつしか音楽を聴くのも買うのも制作するのもコンピューターの中で完結してしまうことに違和感を覚え、コンピューターを使った音の表現方法を模索する中でMaxと出会いました。私の手法は主に実空間とコンピューターを結び、インタラクティブに音楽を生成していきます。植物や水晶などを動かして音楽を奏でるシーケンサーや、煙の動きからサウンドを生成するなど、主に画像解析によって得た情報を元に音楽を生み出す作品を制作してきました。今回はこの連載のためにちょっと面白いパッチを用意しています。Webカメラに映った顔の映像から心拍を検出し、MIDIノートをトリガーするパッチ、Face Beatです。必要なのはラップトップと内蔵カメラ、そしてMaxだけ。もちろんデスクトップ型+外付けWebカメラにも対応しています。
今回紹介するのは、きらびやかでアンビエントな電子音を奏でる自動演奏パッチです。とっつきやすいように、DAWやシンセで一般的な要素をメインに構成した特製パッチを用意しました。メイン・パッチは、左半分が自動演奏プログラム、右半分が各種アナライザーで構成されています。上から下へ、なるべく処理の流れに沿ってオブジェクトを配置しました。メイン・パッチの左下にあるスピーカーのアイコンがオンになっている状態で、左上の丸いボタンをクリックすると、ボタンが点灯して自動演奏が始まります。自動演奏のスイッチをオンにすると、直下の[metro]オブジェクトが動き始めます。[metro 500]は0.5秒に1回“bang”メッセージを出力し、[counter]オブジェクトは“bang”を受け取るたびにカウントを1ずつ進めます。
今回は、主に舞台作品でほかの音楽家と協働する中で、実際に使用しているM4Lデバイスを紹介したい。筆者が参加するような舞台作品の場合、音と映像の厳密な同期を求められることが多い。加えて、舞台作品という性質上、現場での変更が多く、それに即時に対応することが求められる。そのために、ここで取り上げるようなM4Lデバイスを作成し、音響オペレーターに使ってもらうことで正確性を高め、効率化を図っている。ただ、一般的な舞台の場合はそれぞれのセクションのプロフェッショナリズムが高く、このようなパッチを使用してもらうのは、実際にはケースとしては限られているかもしれない。しかし、例えばライブ・パフォーマンスにおいて、一人で音も映像も同時にコントロールする場合などで応用することも可能である。
今回紹介するのは、MCオブジェクトを利用したパッチです。MCはMaxのオーディオ処理の機能をラッピング(ラッパー、Wrapperと同義語)することにより、今までと異なる方法でマルチチャンネル信号を利用できるよう実装されたものです。ラッピングというのは、例えると“Pro ToolsでAUプラグインを使いたい”というような場合に利用する、ユーティリティ的な位置付けのもの。異なる規格の間を取り持って利用できるようにラッピングする、という意味合いでこの名称が用いられています。MC Wrapper Objectsのヘルプでは、従来の方式とMC方式の比較が記載されています。従来の方式では、周波数の異なる4つの[tri~]オブジェクトが出力する4つの周波数の音を4つの[live.gain~]を通し、[dac~]オブジェクトにステレオ(2ch)で出力する構造がold schoolとして示されています。
今回紹介するのは、グラニュラー・シンセシスを応用したリバーブ、Particle-Reverbです。まず大まかな仕組みを説明します。グラニュラー部分のインプットは、一定時間[buffer~]に録音。その[buffer~]から、指定したグレイン・サイズ(波形を細かく分割するときの大きさ)、ポジション(分割する場所)、各ランダム範囲に影響を受けてグレイン(波形を細かく分割した粒子のようなもの)が生成されます。従来のリアルタイムのグラニュラー・シンセシスと異なり、Particle-Reverbではグレインの生成量が非常に多いです。設定では、5msごとに指定した長さのグレインが生成され続け、オーバー・ラップして(重なって)いきます。オーバー・ラップ数(同時再生数)が300〜400と上がるにつれ、音が重厚になり、リバーブのようなエフェクトとなるのです。CPU性能の劇的な向上とともに誕生した、ハイエンド向けグラニュラーということになりますね。EQやコンプなどに比べるとまだ歴史が浅い分、探求心がくすぐられます。
読者の皆様、初めまして。onigiriと申します。普段はCYCLING ’74 MaxやDAWを使用した楽曲制作を行っており、最近ではShrine.jpというレーベルから1stアルバム『microwave』をリリースしました。今回は、そのアルバム制作に使用した“オーディオ・ファイルの再生位置をランダムに切り替えてループ再生するパッチ”を紹介。分かりやすいようにパッチ構造を単純化したので、中〜上級者の方にとってはやや物足りないかもしれませんが、これからMaxを始める方にとっては取り組みやすいものになっていると思います。
Cycling '74が808DAYを祝して伝説的なインストゥルメントTR808のカスタム・テーマを無償提供中です。
2018年にリリースされたMax 8には、さまざまな新機能が搭載されました。その中でも目玉の機能として注目を集めたのが“Node for Max”。今年の4月に開催されたCYCLING ’74の公式イベントであるExpo ’74 2019では、Node for Maxのワークショップが満員になるほどの人気ぶりを見せていました。一方で、Node for Maxが内包しているNode.jsについてよく知らず、使い方が分からないという声も多く聞きます。今回はNode for Maxについての簡単な説明と、それを使って作った機械学習パッチを紹介しましょう。
演劇の音響の現場では予想外のことがよく起こります。その日の俳優の演技によって内容は多かれ少なかれ変わりますし、時間ドメインの表現でもないので尺も伸び縮みするのです。生で上演しているのでトラブルもよくあります。そういった時間の調整も音響の仕事の一つですが、特定の音が舞台上のキューになっていることも多く、“とりあえず何か鳴らしておけばなんとかなる”ともいかないのが難しいところ。舞台上で鳴っている音の長さを伸び縮みできればいいのですが……。そこで今回は、Jitterの行列演算で制御するビート・ルーパーを紹介します。
今回紹介するのは「EuclideanRhythm」というリズムを生成できるパッチ。4trのMIDIシーケンサーがあり、パラメーターを調整するとリズム・パターンを生成可能です。それぞれのシーケンサーはMIDIチャンネル1〜4chに割り当てられています。パッチ上の“MIDI Out”からMIDIポートを選択して、DAWに立ち上げた音源やハードウェア音源などへMIDIが出力されるように設定しましょう。
“作曲”という言葉は誰もが聞いたことがあると思いますが、“生成”という言葉についてはあまりなじみが無いかもしれません。今回は音楽の生成にフォーカスして、作曲における固定観念を解きほぐします。パッチを通じてどのようにして機械に作曲させるのかを体験し、人間と機械の特性の違いについて考えていきましょう。
今回は、バックボーンにTwitterを用いてMaxパッチを操作します。なぜTwitterなのかと言いますと、①“Twitter Streaming API”を用いることでほぼリアルタイムでツィートを取得できる、②テキスト・ベースでやりやすい/分かりやすい/データが軽い、③バルスに耐える堅牢性、④将来URLを読めば写真/動画なども扱える可能性、といった理由です。
普段私が作曲する中でワクワクして作ったパッチの1つを紹介します。このパッチの原型は15年ぐらい前に作っていて、幾度か手直しを行い、ライブ・エレクトロニクス作品における生楽器パートの作曲や、生楽器の音に追従する伴奏装置のプログラムとして使用しています。なお、今回配布するにあたって、このパッチだけで完結できるようにアレンジしています。
主要なシステムは極めてシンプルです。オーディオ・インターフェースに入力されるギターの音をMaxに取り込んで、そこからギターのひずみ系プラグイン(このパッチには含みません)、MIDIフット・コントローラー、ディレイ、パンなどの情報をリアルタイムで処理しています。
1990年代から愛用している“グラニュラー合成”は、音素材を短い“粒”に分けることによって複雑なテクスチャーを作ることができます。面白いテクニックですが、何十、何百の粒の制御が大変です。このパッチでは、一個一個の粒に動画の画像ピクセルを割り当て、動画内の動きの速さと方向で音量/音高をコントロールしています。グラニュラー合成の粒の再生位置は、ピクセルの横位置で決まります。このマッピングによって、音と動画の納得できる同期が得られるというわけです(元の動画とサウンド・ファイルによりますが)。
今回紹介するパッチは、“遺伝的アルゴリズム・リズム・マシン”と言います。実際の作品制作にはまだ使っていませんが、そのうち素材作りに活用しようと思って作っておいた遺伝的アルゴリズムを利用したベーシックなパッチです。このパッチでは、8つの音から成るA/B2つのリズム・パターンを用意し、各パターンの音が鳴る/鳴らないが、AあるいはBから1/2の確率で選ばれることになります(一様交差)。つまりA/Bの同じポジションの音が両方とも鳴らない場合は無音、両方とも鳴る場合は発音、片方が鳴る場合は1/2の確率で鳴る/鳴らない場合があります。この結果、次のAのパターンがこのアルゴリズムによって新しく作られたパターンに置き換わり、次のリズムを鳴らします。
今回紹介するtel“BOOK”minはノート・パソコンを傾けたり光を当てたりすることでテルミンのような演奏が可能になるパッチです。このパッチは、緊急モーションセンサー(SMS:Sudden Motion Sensor)が内蔵されているAPPLEのノート・パソコン(HDDモデル)でしか、すべての機能を使うことができません(2016年7月現在、HDDモデルのMacBook Proは1機種しか販売されていません)。また、ノート・パソコンを直接傾けたり揺さぶったりという行為により演奏しますので、あらかじめ重要なデータなどはバックアップいただき、ご理解の上、使用ください。
私は時間の中に展開される音の組織のあり方に、高い純度の関係性を求めています。音は音楽である以前に時間の中で推移していく何物かであり、現れては消えていく小さなサイクルのつながりによって紡がれていく生命の営みを例に出すまでもなく、実に生命的な存在です。既存の“音楽的な”発想内にとどまらずに作曲すること、時には自分が土台にしている音楽的な要素を根底から疑ってみる必要性から、本作を作曲しました。今回のパッチは発表時に使用した音響部を取り出したものです。
今回はAmbisonicsを用いて空間音声をミックスするMaxパッチをご紹介します。YouTubeのWebサイトに記載されている空間音声を使用した動画のアップロード要件を見てみると、X(前後)、Y(左右)、Z(上下)、W(全方位)の4つの指向性による音声をミックスすることによってYouTube空間音声が成り立っているようです。手順としては空間に音源を配置し、前・後・左・右・上・下の6つの成分に変換し、それをミックスしてWXYZの4chの音声ファイルを生成します。それを実現するためにフランスの音楽/音響の研究機関であるCICMが開発したHOA Libraryを使用しました。
作品の一つである『どこかの日常』における演奏方法は、ヘッドフォンから聴こえてきた言葉を復唱するものです。“スピーカー”と呼ばれる4人のパフォーマーはそれぞれヘッドフォンを装着しています。リアルタイムに放送されているラジオ放送の音声をコンピューターに取り込み、音響処理をかけた音声をそれぞれのパフォーマーに送ります。“スピーカー”は客席の四隅に立ち、サラウンド再生方法の一つであるクアドラフォニックの形態を模します。この方法は、音響処理が演奏家への指示として使えること、また電子音響音楽において培われてきた、音響処理による表現が生演奏にも応用できること、などのメリットがあります。このコンピューターに音声を取り込んで音響処理を施し、各パフォーマーに送るまでの処理をMaxで行いました。
HEXPIXELSでは、映像出しの段で主に“openFrameworks”というC++ベースのプラットフォームを使っており、オーディオに反応するリアルタイム・グラフィックスを生成しつつ、それらをミックスしたり切り替えたりするスタイルでVJを行っています。“リアルタイム”というのが結構重要で、“今の音の具合で、映像のパラメーターがこの時に見られる一過性の気持ちよさ”を発見しつつ映像を付けていくのが、面白いポイントだと思っています。システムとしてMaxを使っている部分は、大きく分けて、音を解析するパート/映像アプリの制御/ビデオ・ミキサーのコントロールの3パートに分かれています。
今回紹介する[2d.wave~]を利用したサンプル・ルーパーは、規則的で数学的な挙動を繰り返すため、ある意味でMax的でないと感じられるかもしれません。ですが、このパッチのように完全なランダムではなく、予測可能と予測不能のギリギリのラインで構築するループには、特異なグルーブが宿ると思っています。[2d.wave~]についての詳細は割愛しますが、簡単に言えば波形を分割して再生位置を決定(y軸)し、任意のピッチで再生(x軸)するオブジェクトです。このパッチでは、x/y軸ともに三角波をシグナルとして与えることで再生範囲を折り返しながら再生し、通常の再生と逆再生を交互に繰り返すパッチとなっています。
長年Maxを使ってインタラクティブなシステムや作品にかかわってきているので、それらのネタの中から今回は似非(えせ)DJスクラッチ演奏を、しかも半自動で行うパッチを紹介します。特定テンポのビートに合わせてスクラッチ・フレーズを鳴らすものです。キーの1〜4でそれぞれ4分音符、8分音符、16分音符、6連符のフレーズを鳴らせます。各フレーズの発音位置は画面上にチェック・ボックスとして並んでおり、フレーズごとにどの音を鳴らす、鳴らさないかを自由に設定できます。
このパッチはライブ演奏、リミックスなど、さまざまな使い方が可能だ。最初に“Load Demo Sample”ボタンや“Load Your Own Sample”ボタンをクリックしてバッファーにオーディオ・ファイルを取り込み、中央にあるスピーカーのアイコンのボタンをクリックしてオーディオを鳴らす。その後、インターフェース左上にLEDメーターのように並んだプリセット・ボタンをクリックする。問題が生じなければこれで音が出てくるはずだ。また、サンプルの長さによりけりだが、再生レートを調節しなければならない場合もある。この際、プリセットの切り替えはゆっくりと行うことをお勧めする。ちゃんと聴いてほしいんだ。そうするとループが繰り返されるたびに微妙な違いが現れていることに気付くはずだ。私はこれが気に入っている!
Logicにはさまざまな機能がありますが、僕が特に“Maxの中で使えたら良いのになあ”と思っていた機能がチャンネル・ストリップです。出したい音を作るために、さまざまなプラグイン・インストゥルメントやエフェクトを挿しては替え、挿しては替えることはよくあります。また、移動が多い僕が愛用しているLogicの機能が、Caps LockをオンにするとコンピューターのキーボードがMIDI鍵盤のようになる“Caps Lock Keyboard”です。そこでチャンネル・ストリップとCaps Lock Keyboardを組み合わせ、読み込むプラグインによってさまざまな音が出せるプラットフォームのようなパッチを作ることにしました。ユーザー・インターフェースはLogicにのっとっているので、Logicユーザーがこのパッチを開いて“便利!”と感じてくれるといいなと思っています。もちろんMaxで開いて、さらに機能拡張することも可能です。
今回私が紹介するのは、今流行の自撮りによって音が変化する“自撮りシンセサイザー”です。パソコンのカメラから見えているあなたや部屋の様子が、ダイレクトに音に変換されます。仕組みを簡単に説明すると、コンピューター付属のカメラやWebカメラなどを利用して自分の姿をキャプチャーし、その動画の画素値を順番にスキャンして、音声に変換するというものです。例えば手を振ったり顔を近づけたり、コンピューターを揺すったりすることで音の変化を体感できます。世の中に全く同じ顔や同じ服を着ている人や、同じ部屋に住んでいる人は存在しないと思いますので、“自分だけの音が得られるシンセサイザー”と言えるかもしれません。このパッチにはGenを利用した画像エフェクトも付いています。
今回は初心に返って“乱数”にフォーカスしてみます。乱数というのはコンピューターが持っている重要な特性の1つ。人間が乱数を生成することはとても難しくて、例えば“でたらめに歩いて”と言われても、本当にでたらめに歩くのは難しく、どうしても規則のようなものが出てきます。なので、乱数を意図的に出せない僕ら人間としては、それとどう対話し、その特徴をどう表現に反映していくかという辺りが、Maxを使う上で面白い部分です。どこでどう使うかは、ある種のセンス。そのセンスがよろしくないと、乱数が乱数で終わってしまいます。音とともに最もシンプルにそれを浮き彫りにするパッチを書いてみました。ぜひダウンロードして実際に起動してみてください。
今回は、いつの日か試そうと思って眠っていたアイディア=3Dモデルを読み込んでポイントクラウド音に変換するパッチを作ってみたいと思います。同じようなことをほかの環境でやろうとするとopenFrameworks+SuperColliderでも同程度の時間でできたかもしれません。ですが、パラメーターをコントロールするためのユーザー・インターフェースを作ったり、トライ&エラーを繰り返すことを考えると、やはりMaxの方が断然早いです。オープン・ソースでないことがさまざまな環境に組み込む際にネックとなり、コアなプログラマーからは敬遠されることも多いMaxですが、Pure Dataとは比べ物にならないくらい高機能で安定しているので、まだまだ活動の場は多そうです。
今回は僕が素材作りに使っているパッチを紹介したいと思います。このパッチは、8小節の音素材を16分音符で切り分け、新しいパターンに組み替えてループさせるシンプルなステップ・シーケンサーです。8小節の素材であれば、それがビートであってもシンセ・パッドであっても、BPMや素材の長さ/音色も関係なく16分音符で切り取り、並び替えてくれます。同じ機能を備えたシーケンサーが全部で3つあり、3種類の素材を入れることができます。
このパッチの名前は「harmonics + subharmonics laboratory」と言います。このパッチを使うと、音色とパターンの間で美しい空間を探検することができます。このパッチで聴けるサウンドは、一連の正弦波オシレーターで作成されます。この正弦波オシレーターは(基音のフリケンシーを増加する)ハーモニクスと(基音を区分けする)サブハーモニクスを奏でます。ここには2つの独立したボイスがあります。両方のボイスにそれぞれに特化した基音があり、この基音はインターフェース上のキーボードで設定/変更することが可能です。しかし、ここで留意してほしい点は、このフリケンシーは平均律ではなく216Hzという数学的な値だということです。また各ボイスにはアタック/リリース/フィルターなどのパラメーターも付いています。
このパッチでは、1つのオーディオ・ファイルを読み込んで、スペクトルの特徴を維持したまま新たな音響を自律的に生成させ続けることが可能になります。プラグイン・エフェクトなどを駆使して、破壊的に原音とは別の音に作り替えていくわけではなく、あくまで元のオーディオ・ファイルの“バリエーション”を生成します。読み込むオーディオ・ファイルは、数小節の楽器演奏でも数十分に及ぶフィールド・レコーディングでも大丈夫です。そのファイルが持つ音響的特徴を維持しながら、別の形に生まれ変わらせるのがこのパッチの特徴であるため、読み込む素材によって出音の雰囲気が大きく変わり、半分予想できつつ、半分は予想ができないような音響が生成されます。
Maxには主にWeb制作に使われるプログラミング言語=JavaScriptを使うための“jsオブジェクト”が用意されており、複雑な計算の実行やパッチが肥大化しやすい振り分けなどの処理の簡略化、数字1文字の変更での処理全体の複製などができるようになっています。今回は、このjsオブジェクトを使った独自の仕組みで動くシーケンサーを紹介します。
今回紹介するのは、この記事用に作った“LOOP MAKER”というパッチです。大きな四角の“lcd”オブジェクトの中でマウスをクリックしながら線を描くと発音し、上下で音程、左右でフィルターの周波数の値をコントロールできる仕様になっています。エンベロープやディレイの長さ、フィードバック、フィルターなどパラメーターのすべてがよくある仕組みなので、すぐに理解できるかと思います。音は常にテンポに同期し、16分音符のタイミングで発音するようになっています。
今回のパッチは、演奏者の1人という意味合いが大きいです。ほかのプレイヤーもメトロノームで時を刻むスピードを変化させたり、CDプレーヤーで即興的にプレイ/ポーズのリピート演奏をしたり、ステージ上をランニングするパフォーマンスもあったりと、“これぞフルクサス!”とうなってしまう光景でした。指示もシンプルで、リアルタイムで音を生成していくというよりも再生方法のコントロールをメインに、シンプルなパッチを意識して書きました。任意の音声ファイルを読み込み、パフォーマンスのトータルの時間を入力しプレイすることで、サウンドがLchからRchへパンニングされ、移動しきったら数秒間の無音状態を経て、また対のポジションにサウンドが移動していきます。トータル・タイムに近づけば近づくほど、音像移動のスピードがアップし、無音時間も短くなっていきます。
今回は僕たちがライブで使っているパッチですが、紹介に入る前に、普段僕たちがライブで何をしているのかを簡単に説明すると、2台のラップトップにそれぞれのMaxパッチを立ち上げて、7割即興で演奏しています。ライブ中はシーケンスやエフェクトをすべてリアルタイムで構築するのが難しい場面もあるため、エフェクトのパラメーターやシーケンスなどをある程度パッチにプリセットしておいて、ラップトップのキーボードを触ることで大きな展開を付けられるようにしています。ファイルを開いたら、まずは何も考えずにスペース・キーを押してください。しばらく再生してみて、次の展開が欲しくなってきたら“d”キーを押してみてください。フィードバック量が上がって“キュアァアァン”と鳴っているはずです。そのまま10秒ほどその状態をキープしていると、きっと体がビートを欲しているかと思います。
今回は私NOEL-KITが、エレクトロニカやアンビエントの制作に便利なオリジナル・パッチを紹介したいと思います。このパッチは、読み込んだオーディオ・ファイルをリアルタイムで繰り返しリサンプリング、6系統の異なる再生方法で同時再生し、複雑なサウンド・レイヤーを生成するものです。自動生成だけでなく、マニュアル操作でも細かな設定ができるようになっています。まずは左端の“LOAD”でオーディオ・ファイル(WAV/AIFF)を読み込んで“START”をクリックしてください。リアルタイムでリサンプリングされている音の波形が中央部に表示され、元音にテクスチャーが追加されていきます。波形の下にある“120”“4”という数字は、BPMと拍子を表しています。再生しながら“PITCH”“DRY/WET”“MESS(グリッチ+リバース)”のノブを操作することで、サウンドの簡易的なコントロールが可能。また、“FRZ”ボタンをクリックするとリアルタイムのリサンプリングを中断し、既にレコーディングした波形を保ったままレイヤーを生成することもできます。
かつて電子音楽の世界において、録音された音の高さを保ったまま時間を変化させて再生すること=タイム・ストレッチングは、1つの技術的な“夢”でした。通常のアナログ・テープやレコードでは、録音時より速く再生すれば音高は高くなり、遅ければ低くなってしまいます。今回紹介するパッチは、オーディオ・データの再生において音高と時間を個別に操作でき、さらには再生方向の正逆も自由な、リアルタイムの“スクラブ再生”を実現します。パッチを開くと、Max6がデフォルトで持つ笙(しょう)のオーディオ・ファイルが読み込まれています。中央の波形の部分を左右にドラッグしてみてください。音の再生位置を“こする”ように移動できます。これが“スクラブ再生”です。さらに右側の鍵盤インターフェースを使って、十二平均律に基づく相対間隔で音高を上下に移行することができます。そしてパッチ左側の矩形領域にオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップすれば、任意の音色の使用が可能です。
静かなライブ・セット(アンビエント・セット)のときに使用しているパッチを公開したいと思います。このパッチは4chのルーパーで、“シンプルな機能でいかに音楽を作るか”がテーマになっており、選択したフォルダーの中からオーディオ・ファイルを選び出し、ループさせるというものです。それぞれのチャンネルには、元のサウンド・ファイルに対して、4/5/8度(オクターブ)ピッチを下げられるようにしてあります。使い方は、“Select folder”をクリックしてフォルダーを選び、[umenu]からオーディオ・ファイルを選ぶだけです。デフォルトではピッチは元ファイルのままになっています。オーディオ・ファイルを選んでから音量フェーダーを上げてみてください。“Fade In”の[bang]をクリックすると、自動でフェード・インすることもできます。ピッチの変更は、[bang]をクリックすることで可能ですが、それ以外のピッチにしたい場合は[flonum]に直接数値を入力してください。またこのパッチでは、リバーブなどVSTプラグインを読み込めるようにしています。
今回紹介するのは、僕が作成したコラージュ・ルーパーです。このパッチは、あるフォルダーに入っている複数のオーディオ・ファイルから16個の断片を切り出し、16×16のステップ・シーケンサーでトリガーして新しいループを作り出します。ざっくり言えばスライサー的なものですが、切り出される断片はランダムなファイルのランダムな位置で、一般的なスライサーよりもめちゃくちゃで偶発的なサウンド・メイキングを狙っています。使い方は簡単で、“Select folder”ボタンを押して素材となるオーディオ・ファイルが収められたフォルダーを指定すると自動的にランダムな断片が読み込まれるので、あとはステップ・シーケンサーをスタートすれば音が出ます。
前回、MIDIキーボードで演奏できる初歩的なシンセを作ったので、今回はそれを改造してもう少し実用的なパッチにしたいと思います。オブジェクトには大きく分けて、ボタンやスライダーなどのユーザー・インターフェースを持つ「UIオブジェクト」と、ユーザー・インターフェースを持たない通常のオブジェクトがあります。通常のオブジェクトは箱の中にテキストでオブジェクト名とスペースで区切った初期値(アーギュメントと呼びます)が書いてある形式で、必要に応じて初期値をタイプして書き込みます。配置済みオブジェクトの外観や細かな設定変更は、インスペクターで行えます。次は結線です。オブジェクトの上下にはパッチコードをつなぐ場所「インレット」(入力)と「アウトレット」(出力)があり、ここにコードをつなぎます。オブジェクト同士がパッチコードでつながると、メッセージ(数値や文字列データ)やオーディオ信号が流れるようになります。
まずはpatch1(左)です。440という数字が入っている部品は数値パラメーターのオブジェクトで、自由な値をセットすることができます。[cycle~]はサイン波オシレーターです。スピーカー・マークのオブジェクトは音の出口=DAコンバーターで、クリックすることでパッチのオーディオ処理の開始/停止を行う役割も持っています。となると、Maxを全く知らない方でも想像がつきそうです。このパッチは任意の周波数のサイン波を出力するものです(聴力検査ソフトと言い張ってもよいです)。続いてpatch2(右)はもう少し複雑な例です。[notein]はMIDIノート情報を受信し、[stripnote]はノート・オン情報だけを通過させます。[+ 7]は(ご想像通り)7を加え、[mtof]はノート・ナンバーを周波数に変換します。[saw~]はノコギリ波オシレーターで、[line~]はここではエンベロープと考えていただいてよいです。
<7/28有観客&ストリーミング配信>アーカイブは8/12の23時まで!是非ご参加下さい。
Maxでのステップ・シーケンサー開発をテーマとしたGregory Taylor著の本書は、基本のシーケンサー・パッチに機能を追加し、それによってどんな効果が生まれるのかについて解説しつつ、別のアプローチでそれを実現するためのテクニックも紹介されています。国内正規品MaxユーザーへはEPUB版を無償提供中!
エムアイセブンジャパン正規品のMax 8を購入しユーザー登録を完了した方には、日本語版インストーラーをMUSIC EcoSystems MYページから提供しています。さらに、新進気鋭の国内アーティスト8名から提供頂いたサンプル・パッチ20ファイルとGregory Taylor著のStep by Step日本語訳EPUB版も無償提供です。
Max 8のレギュラー版
Max 8 + RNBOバンドル
Max 1〜7日本版/海外版対象
Max 8のアカデミック版
Max 1〜7アカデミック版対象
教育機関向けマルチライセンス